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製造業でナレッジマネジメントを導入すべき理由

製造業を取り巻く技能伝承の課題と対応

更新日:2024.2.22

背景

人口減少により労働力不足が加速する日本では、製造業に限らず技能伝承がより強く求められるようになってきています。 世の中には所謂“教育用システム”を銘打ったサービスは多々ありますが、ある調査結果によると「技能伝承がうまくいっていない」と回答した企業は半数近くに上ります。

技能伝承がうまくいかない理由

技術伝承がうまくいかない理由としては、 ・言語化が難しい作業は熟練者の経験に頼り切っている ・ベテランと若手のコミュニケーションが希薄 ・マニュアルや標準書などのドキュメント不足 ・計画的なOJTが組み立てられない などが挙げられます。このように技能伝承がうまくいかないのは教育に関するノウハウや仕組みが不十分であることが主な理由です。個々の指導や管理に任せきりにするのではなく、組織的かつ体系的に取り組むことが結果として効率の良い技能伝承に繋がります。次章では技能伝承の対策として有効なナレッジマネジメントについて言及していきます。

ナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントとは、個人の持つ知識やノウハウといった「ナレッジ」を組織全体で共有することで、組織の生産性の向上や新規事業の開発などにつなげる手法です。 日本では一般的に終身雇用制度を前提とした社員教育が行われるとともに、労働時間の制約も近年ほど厳しいものではなく、そのような環境下で数年単位の時間をかけて教育を施すことが一般的でした。 しかし、働き方の多様化や少子化に伴う労働力の確保が困難になった現在では、長期間を前提とした教育が難しくなる一方で、海外企業による市場の席巻など業界を取り巻く環境もめまぐるしく変わり、それに対応できる技術力も求められるようになってきました。 そのような状況下で企業が生き抜くために、組織的にナレッジを共有して新たなイノベーションを築くナレッジマネジメントが必要となっているのです。 中でも、言語化による表現が難しく経験で培った勘やコツによるものは「暗黙知」と言われ、これを手順書などの「形式知」に変換し、コミュニケーションで繋ぐことが重要です。

SECIモデル4つのプロセス

  • 暗黙知

    職人が持つ技術
    感覚的な勘
    経験が必要な作業

  • 形式知

    マニュアル
    手順書
    動画や写真

SECI(セキ)モデルとは、個人が持つ知識や経験を集約し、組織全体にノウハウやスキルを共有した上で、新たな知識を生み出していくためのフレームワークです。 経営学者の野中郁次郎氏らが提唱しました。 SECIモデルは4つのプロセスで構成されており、ナレッジマネジメントの基礎理論として用いられています。 特に表出化と連結化が重要であり、ルールに則って学んだことを言語化・図式化し、コミュニケーションを通じて改善点を抽出、対処法などをマニュアルなどに記し実践を繰り返すことで、効率化や品質向上の善循環に繋げていきます。

製造現場におけるプロセスの事例

・共同化プロセス

共通の体験を通じて暗黙知を移転させるプロセス。
製造現場では、OJTなどにより熟練者の手順を見ながら作業を実践することで、技能や知識を学習することが該当します。

・表出化プロセス

個人の暗黙知を言語化しメンバーと共有するプロセス。
例として、熟練者から学んだ内容をメンバー間で話し合い、分かりやすいマニュアル等を作成する作業です。

・連結化プロセス

異なる形式知を組み合わせて新たな知を創出するプロセス。
他部署の知識やノウハウを取り入れたり、ヒト作業に検知システムなどのIoT技術を導入し効率化を図るような取り組みです。

・内面化プロセス

新たに得た形式知を学習による体得するプロセス。
連結化プロセスで作成したマニュアルを使い続けることで、新たなコツやアイデアが生まれることが該当します。

技能伝承を効率的に進めるために

技能伝承を効率的に進めるためには、SECIモデルの中にある表出化・連結化プロセスに軸に置きつつ、サイクルを描くことが重要です。しかし、せっかく作ったマニュアルや手順書も製造現場や事務所などに点在させてしまっては、探したり閲覧する手間がネックとなりいずれ形骸化してしまいます。形式知化されたマニュアル類は、データ化によりいつでも閲覧できるようにすることは勿論のこと、改訂履歴や閲覧者の管理などを含む組織的な文書管理が大切です。これを実践することで無理なく現場で運用し続けることができ、ノウハウの進化に繋げることができるのです。 【文書管理の効率化】 「NAVINECT帳票管理アプリ」は、文書管理を効率化するためのサービスです。マニュアルや標準書、ISO文書には、紙だけでなくエクセルなどの電子データも存在します。帳票管理アプリを導入すれば、さまざまな形式の書類データを1つのシステムで管理できるだけでなく、作業者ごとの確認履歴やバージョンも即座に把握することが可能です。マニュアルは現状使用しているものだけでなく、自由な書式でテンプレートを作ることも可能です。

2種類の帳票タイプに対応します

  • 工場運営帳票

    製造現場における、事務所・現場間の双方向で
    『指示』『報告』『申請』される運営帳票に対応します。

    異常報告書、保全報告書、クレーム報告書
    試作指示書、変更管理申請書、資材廃棄申請書など

    ポイント NAVINECTの機能
    運営しやすい帳票になっているか? 柔軟なレイアウト設定が可能です。紙の帳票に近いイメージで使用できます。
    素早い入力ができるか? 入力項目ごとに、テキスト、リストなどを自由設定、部品間の計算設定も可能です。
    関連文書を添付できるか? 運営帳票に文書ファイル(Excel/Word/PDF)を自由に添付可能です。
    帳票に追記は可能か? 紙帳票と同様、帳票上の許可された欄に、承認者による追記が可能です。
    柔軟な承認をすることができるか? 承認者選択、代理認証など、24時間365日の運営に対応可能です。
    関係者に配布、周知ができるか? 必要な関係者に配布する回覧設定が可能です。閲覧履歴も確認可能です。
    承認者への通知や、承認進捗の確認ができるか? 運営帳票は、スピードが命です。承認者への通知と進捗可能機能で停滞を防ぎます。
    集計分析が可能か? 帳票情報のリスト表示が可能です。これにより、集計・分析作業が可能になります。
  • 文書管理帳票

    ISO9001/14001等の文書管理や、設計仕様書など
    文書番号による公式文書管理に対応します。

    作業標準書、設計仕様書など

    ポイント NAVINECTの機能
    番号管理がされているか? 文書管理カテゴリ機能により、英字/数字を使ったルール設定、自動発番が可能です。
    原本管理がされているか? Excel/Word/PDFファイルを電子データとして保管します。
    常に最新版が表示されているか? 最新版のみ表示する設定が可能です。旧版を誤読する事による事故を防ぎます。
    使用期限の管理や、改版管理がされているか? 使用期限に到達すると関係者にメールが発信されます。改版番号管理も可能です。
    ルールに則った承認者が承認しているか? 承認設定機能により、定められた経路、承認者での承認が可能です。
    関係者に配布され周知されているか? 必要な関係者に配布する、回覧設定が可能です。閲覧履歴も確認可能です。
    文書はすぐ取り出せるか? カテゴリ設定によりグループ分けされているため、必要文書をすぐ取り出せます。
    権限管理されているか? 権限により、必要部署のみ作成、閲覧できるように設定が可能です。

さまざまなイメージの帳票を設計可能です

【ナレッジへの展開】 突発的な異常が起きた際に発行する異常報告書などの“工場運営帳票”は、対処方法や結果を経験値としてデータベースに蓄積していくことで初めてナレッジとして活用できるようになります。この積み重ねが現場カイゼンや作業者スキルのベースアップに繋がり、企業が担う生産活動全体の成長に繋がります。

【動画マニュアルの活用】 言語化が難しい作業経験やトラブル対応力は、紙のマニュアルだけでは十分に伝達できません。そこで役に立つのが動画を使ったマニュアルです。例えば作業現場を撮影した動画であれば、ベテランの目線や所作といった情報を分かりやすくデータで残せます。マニュアルの確認履歴は作業者ごとに管理でき、管理者は一目で学習状況を把握することが可能です。未確認の作業者には、確認を促すなどの対処を行うことで、確認漏れを防止します。弊社では動画マニュアルの制作代行も実施しており、効果的な技能伝承を支援します。

動画マニュアル再生画面

閲覧履歴の確認画面

デジタル化したマニュアルは、工程管理アプリを活用することで、「作業者がいつでも見れる」環境を作ることが可能です。例えば紙によるマニュアルが現場から遠い場所にある場合、作業者は閲覧や再確認を避ける傾向にあり、これが元で不良や事故が発生する場合があります。マニュアルをいつでも閲覧できる環境を作っておけば取りに行く手間を省くだけでなく、一度学んだ作業の記憶定着や、作業中の戸惑いによるリスクが軽減にも効果があるため、結果的に作業時間の短縮にも繋がります。 作業マニュアル自体は、生産品種に紐づける形で事前に登録し運用します。

2種類の教育方法によりヒト起因のミスロス削減に貢献します!

事前確認・教育

作業記録と同時に確認

ナレッジマネジメントを行う際の注意点

ナレッジマネジメントの実践にはいくつかの注意点があります。 失敗の要因は企業によりさまざまですが、組織的な推進を前提とする上で作業者の協力は必須です。せっかくシステムを導入しても、個人任せにしてしまうと「現場がシステムを使ってくれない」「ノウハウをマニュアル化してくれない」などの結果になりかねません。 先ずはシステムを導入する目的をしっかりと啓蒙し、マニュアルの整備や機能を精査することが、どのようなメリット生み出すかを共有しながら推進していきましょう。